注73. サービスの貿易

モノである製品は、船や鉄道、または自動車などを使って、簡単に運ぶことができます。ですから、2つの国をまたがった貿易も、それほど難しくなく行うことができました。そのことから、12世紀頃からヨーロッパ諸国では、モノの貿易が少しずつ増えていました。この貿易の量が増えるに従って、それぞれの国で、他国から持ち込まれるモノに税金をかけたり、貿易のために利用される船が嵐や海賊の被害にあった場合に、その損害を補償するための保険の制度などがつくられました。しかし、医療や教育におけるサービスの提供などの分野では、その資格を持った専門家が船などを利用して、相手国に渡り、その国で仕事を始めなければならず、モノの貿易のような制度はありませんでした。しかし、科学技術の発展によって、従来の国内旅行と同じ程度の時間で、外国に旅行することもできるようになりました。また、通信手段も発達して、お客のいる場所まで、仕事をする人が移動しなくても、ほとんどとの仕事を自分が住んでいる国の地方で、全く移動せずにすることができるようになりました。特に、そのような医療や教育などのサービスの提供には、高度な知識が必要で、先進諸国には優位性があり、貿易ができるようになれば、製品の貿易よりもはるかに大きな貿易黒字(もうけ)を生み出す可能性があります。米国などは、この点に注目し、21世紀の米国経済の発展のためには、サービスの貿易に関する新しい制度を決める必要があると考えていました。特に、サービスの場合、提供するサービスの質をどう保証すべきかが問題となることが分かっていました。質の良いサービスとは、どのようなサービスであるのかが、まだ分かっていなかったからでした。最近では、国際標準規格であるISO9000と言う取り決めによって、提供するサービスの質をどう保証しなければならないかの基本が決まっています。

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